この記事では、ドローン国家資格<学科試験>の公式テキストである
「無人航空機の飛行の安全に関する教則<国交省公式>」の
航空法の無人航空機規制についての詳細(教則P12~P24)について解説します
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<この記事でわかること・解決する問題>
学科試験(無人航空機の飛行の安全に関する教則<国交省公式>)内容のわかりにくい所を、図や実例を用いて分かり易く解説し、「なぜこのような制度なのか?」という理由を掘り下げて解説することを目指す
前回の記事「法規制~その1 航空法の一般知識」はこちら
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無人航空機に関する規則 ~その2 航空法の無人航空機規制についての詳細
(2.1) 無人航空機の登録
(2.1.1) 無人航空機登録制度
全ての無人航空機(模型航空機は除く)は、国の登録を受けたものでなければ、原則として飛行できない。登録の有効期間は3年である。機体に登録記号を表示し、一部例外を除きリモート ID 機能を備えなければならない。
(2.1.2) 無人航空機登録制度の目的
無人航空機による不適切な飛行事案への対応の必要性や、無人航空機の利活用の増加に伴い、
無人航空機の登録制度が創設された。その目的は、
①事故発生時などにおける所有者把握、
②事故の原因究明など安全確保上必要な措置の実施、
③安全上問題のある機体の登録を拒否し安全を確保することである。
(2.1.3) 登録を受けることができない無人航空機
① 製造者が機体の安全性に懸念があるとして回収(リコール)している機体や、事故が多発していることが明らかである機体など、あらかじめ国土交通大臣が登録できないと指定したもの
② 表面に不要な突起物があるなど地上の人などに衝突した際に安全を著しく損なうおそれのある機体
③ 遠隔操作又は自動操縦による飛行の制御が著しく困難である無人航空機
(2.1.4) 登録の手続き及び登録記号の表示
無人航空機の登録の申請は、オンライン又は書類提出により行い、手数料の納付等全ての手続き完了後、登録記号が発行される。登録記号は、無人航空機の容易に取り外しができない方法で鮮明に表示しなければならない。登録記号の文字の大きさは機体の重量区分に応じて次の高さとし、表示する地色と鮮明に判別できる色で表示しなければならない。
〇 最大離陸重量 25kg 以上の機体は 25mm 以上
〇 最大離陸重量 25kg 未満の機体は 3mm 以上
所有者又は使用者の氏名や住所などに変更があった場合には、登録事項の変更の届出をしなければならない。3年の有効期間毎に更新を受けなければ登録の効力を失う。
(2.1.5) リモート ID 機能の搭載の義務
登録記号の表示に加え、識別情報を電波で遠隔発信するリモート ID 機能を機体に備えなければならない。ただし、次に掲げる場合にあっては、リモート ID 機能の搭載が免除される。
① 無人航空機の登録制度の施行前(2022年6月19日)までの事前登録期間中に登録手続きを行った無人航空機
② あらかじめ国に届け出た特定区域(リモート ID特定区域)の上空で行う飛行であって、無人航空機の飛行を監視するための補助者の配置、区域の範囲の明示などの必要な措置を講じた上で行う飛行
③ 十分な強度を有する紐(ひも)など(長さが30m以内のもの)により係留して行う飛行
④ 警察庁、都道府県警察又は海上保安庁が警備その他の特に秘匿を必要とする業務のために行う飛行
(2.1.6) リモート ID 機器の概要及び発信情報
リモート ID 機能は、航空機と無人航空機、または無人航空機同士の接触を防止するために備えられるものである。リモート ID により発信される情報には、静的情報として無人航空機の製造番号及び登録記号、動的情報として位置、速度、高度、時刻などの情報が含まれており(所有者情報は含まれない)、1秒に1回以上発信される。リモートIDは内蔵型と外付型があり、技術規格書に準拠して開発・製造される。
(2.2) 規制対象となる飛行の空域及び方法(特定飛行)の補足事項
(2.2.1) 規制対象となる飛行の空域
A. 空港等の周辺の空域
航空法に基づき原則として無人航空機の飛行が禁止されている「空港等の周辺の空域」とは、空港やヘリポート等の周辺に設定されている範囲、滑走路の延長線上等、飛行場周辺の航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域である。
ただし、航空機の離着陸が頻繁に実施される新千歳空港・成田国際空港・東京国際空港・中部国際空港・関西国際空港・大阪国際空港・福岡空港・那覇空港では、進入表面等の上空の空域に加えて、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域についても飛行禁止空域となっている。
空港周辺の無人航空機 飛行規制について解説
B. 緊急用務空域
国土交通省、防衛省、警察庁、都道府県警察、地方公共団体の消防機関、その他の関係機関の使用する航空機のうち捜索、救助その他の緊急用務を行う航空機の緊急用務空域を指定し、この空域では、無人航空機の飛行が禁止される(模型航空機も飛行禁止)
災害等の規模に応じ、緊急用務を行う航空機の飛行が想定される場合には、国土交通省が「緊急用務空域」を指定し、国土交通省のホームページ・Twitter にて公示する。
無人航空機の操縦者は、飛行を開始する前に、当該空域が緊急用務空域に該当していないか確認することが義務付けられている。空港等の周辺の空域、地表若しくは水面から150m以上の高さの空域又は人口集中地区の上空の飛行許可があっても、緊急用務空域を飛行させることはできない。
C. 高度150メートル以上の空域
高度150メートル以上の空域は、航空機やヘリコプターの飛行領域となるので、無人航空機の飛行は原則禁止となる。因みに海抜高度ではなく対地高度(無人航空機が飛行している直下の地表又は水面からの高度)であり、山岳部などの起伏の激しい地形の上空で無人航空機を飛行させる場合には、意図せず150メートル以上の高度差になるおそれがあるので注意が必要。
D. 人口集中地区
「人口集中地区(DID:Densely Inhabited District)」は、5年毎に実施される国勢調査の結果から一定の基準により設定される人の居住・生活の多い地域であり、現在(2023.2.14)は令和2年の国勢調査の結果に基づく人口集中地区が適用されている。
(2.2.2) 規制対象となる飛行の方法
a. 日中における飛行
無人航空機の操縦者は、日中(日出から日没までの間)における飛行が原則とされ、それ以外の飛行(夜間飛行)は、航空法規制の対象となる。
※「日中」とは、国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間を指す。
b. 目視による常時監視
無人航空機の操縦者は、当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させることが原則とされ、それ以外の飛行(目視外飛行)は、航空法に基づく規制の対象となる。
「目視により常時監視」とは、操縦者が自分の目で無人航空機の位置を見ることを指し、双眼鏡やモニター(FPV(First Person View)を含む。)による監視や補助者による監視は除く。
c. 人又は物件との距離
操縦者は、当該無人航空機と地上・水上の人又は物件との間に直線距離で30メートル以上の距離を保って飛行させることが原則とされ、それ以内での飛行は、航空法規制の対象となる。
「人又は物件」とは、第三者、及び第三者の物件を指し、操縦者やその関係者並びにその物件は該当しない。
※「物件」とは、(a)中に人が存在することが想定される機器、(b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物 等を指す。
物件の具体例 | |
---|---|
車両など | 自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン 等 |
工作物 | ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等 |
(※) | 土地や自然物(樹木、雑草等)などは、「物件」に該当しない。 |
d. 催し場所上空
無人航空機の操縦者は、多数の者の集合する催しが行われている場所の上空における飛行が原則禁止されている。
「多数の者の集合する催し」とは、特定の場所や日時に開催される第三者が多く集まるものを指す。※該当の有無については、無人航空機が落下することにより人に危害を及ぼすことを防止するという趣旨に照らし、集合する者の人数や規模だけでなく、特定の場所や日時に開催されるかどうかによって総合的に判断される。
該当する | 祭礼、縁日、展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート、町内会の盆踊り大会、デモ(示威行為) 等 |
該当しない | 自然発生的なもの(信号待ちや混雑により生じる人混み 等) |
催しもの上空の飛行に際しては、風速5m/s 以上の場合は飛行を中止することや、機体が第三者及び物件に接触した場合の危害を軽減する構造(プロペラガード等)を用意していることが必要である。
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e. 危険物の輸送
無人航空機の操縦者は、当該無人航空機により危険物を輸送することが原則禁止されている。
※「危険物」とは、火薬類、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質、酸化性物質類、毒物類、放射性物質、腐食性物質などが該当する。
※飛行のために輸送する物件は、「危険物」の対象とならない。例)飛行のために必要な燃料や電池、安全装置としてのパラシュートを開傘するための火薬類や高圧ガス、業務用機器(カメラ等)に用いられる電池、等。
f. 物件の投下
無人航空機の操縦者は、当該無人航空機から物件を投下させることが原則禁止されている。物件の投下には、水や農薬等の液体や霧状のものの散布も含まれる。
※無人航空機を使って物件を設置する(置く)行為は、物件の投下には含まれない。
(2.2.3) 規制対象となる飛行の空域及び方法の例外
A. 捜索、救助等のための特例
国や地方公共団体から依頼を受けたものが事故、災害等に際し、捜索、救助等の緊急性のある目的のために無人航空機を飛行させる場合には、特例として飛行の空域及び方法の規制が適用されない。災害時の対応であっても、国や地方公共団体に関わらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず、国の飛行の許可・承認などの手続き等が必要となる。
B. 高度150メートル以上の空域の例外
地表又は水面から150メートル以上の高さの空域に関しては、航空機の空域と分離する観点から原則として飛行が禁止されているが、煙突や鉄塔などの高層の構造物周辺は、高度150メートル以上の空域であっても当該構造物から30メートル以内の空域については、無人航空機の飛行禁止空域から除外されている。ただし、当該構造物の関係者による飛行を除き、第三者又は第三者の物件から30メートル以内の飛行に該当することから、当該飛行の方法に関する手続き等は必要となる。
C. 十分な強度を有する紐等で係留した場合の例外
十分な強度を有する紐(ひも)等(30メートル以下)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を講じて無人航空機を飛行させる場合は、人口集中地区、夜間飛行、目視外飛行、第三者から30メートル以内の飛行及び物件投下に係る手続き等が不要である。
※自動車、航空機等の移動する物件に紐等を固定して又は人が紐等を持って移動しながら無人航空機を飛行させる行為(えい航)は、係留には該当しない。
(2.2.4) その他の補足事項等
A. 第三者の定義
「第三者」とは、無人航空機の飛行に直接又は間接的に関与していない者をいう。
次に掲げる者は無人航空機の飛行に直接又は間接的に関与しており、「第三者」には該当しない。
(a)無人航空機の飛行に直接関与している者
直接関与している者とは、操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員とする。
(b)無人航空機の飛行に間接的に関与している者
間接的に関与している者(以下「間接関与者」という。)とは、飛行目的について無人航空機を飛行させる者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者とする。
① 無人航空機を飛行させる者が、間接関与者について無人航空機の飛行の目的の全部又は一部
に関与していると判断している。
② 間接関与者が、無人航空機を飛行させる者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている。なお、間接関与者は当該指示と安全上の注意に従うことが期待され、無人航空機を飛行させる者は、指示と安全上の注意が適切に理解されていることを確認する必要がある。
③ 間接関与者が、無人航空機の飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる。
無人航空機を飛行するにあたって、可能な限り多くの人を「第3者」ではなく「関係者」とするために、飛行の目的と安全上の注意、トラブル時の対応を十分に説明しておくことが重要である。単に注意喚起のチラシを配ったり、アナウンスしただけでは不十分である。
B. 立入管理措置
特定飛行に関しては、無人航空機の飛行経路下において第三者の立入りを管理する措置(立入管理措置)を講ずるか否かにより、カテゴリーⅡ飛行とカテゴリーⅢ飛行に区分され、必要となる手続き等異なる。
立入管理措置の内容は、①第三者の立入りを制限する区画(立入管理区画)を設定し、②当該区画の範囲を明示するために必要な標識の設置等としており、例えば、関係者以外の立入りを制限する旨の看板、コーン等による表示、補助者による監視及び口頭警告などが該当する。
(2.3) 無人航空機の操縦者等の義務
(2.3.1) 無人航空機の操縦者が遵守する必要がある運航ルール
A. アルコール又は薬物の影響下での飛行禁止
アルコール又は薬物の影響により当該無人航空機の正常な飛行ができないおそれがある間において飛行させないこと。
※「アルコール」とはアルコール飲料やアルコールを含む食べ物を指し、「薬物」とは麻薬や覚せい剤等の規制薬物に限らず、医薬品も含まれる。体内に保有するアルコールが微量であっても無人航空機の飛行を行ってはならない。
B. 飛行前の確認
無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させること。
(a) 外部点検及び作動点検による無人航空機の状況の確認 >各機器の取付状況(ネジ等の脱落やゆるみ等)、発動機・モーター等の異音の有無、プロペラ、フレーム等の損傷や歪みの有無、通信系統・推進系統・電源系統・自動制御系統等の作動状況などの確認。 |
(b) 無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況の確認 >飛行空域や周囲における航空機・他の無人航空機の飛行状況、飛行空域や周囲の地上又は水上の人(第三者の有無)、物件(障害物等の有無)の状況、航空法その他の法令等の必要な手続き等の状況、緊急用務空域・飛行自粛要請空域の該当の有無、立入管理措置・安全確保措置等の準備状況などの確認。 |
(c) 飛行に必要な気象情報の確認 >天候、風速、視程など当該無人航空機の飛行に適した天候にあるか否かを確認する。 |
(d) 燃料の搭載量又はバッテリーの残量の確認 |
(e) リモート ID 機能の作動状況(リモート ID 機能の搭載の例外となっている場合を除く。) |
C. 航空機又は他の無人航空機との衝突防止
航行中の航空機を確認した場合には、地上に降下させるなど、接近又は衝突を回避するための適切な措置を取ること。また、飛行中の他の無人航空機を確認した場合には、当該無人航空機との間に安全な間隔を確保して飛行させ、接近又は衝突のおそれがある場合には地上に降下させるなど適切な措置を取るとともに、飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、他の無人航空機を操縦者と調整を行うこと。
D. 他人に迷惑を及ぼす方法での飛行禁止
飛行上の必要がないのに高調音の発生や、急降下、急接近、等「他人に迷惑を及ぼすような方法」で飛行させないこと。
E. 使用者の整備及び改造の義務
登録を受けた無人航空機の使用者は、整備及び必要に応じて改造をし、当該無人航空機が安全上の問題から登録を受けることができない無人航空機とならないように維持しなければならない。登録記号の機体への表示も維持しなければならない。
F. 事故等の場合の措置
a) 事故の場合の措置
次に掲げる無人航空機に関する事故が発生した場合には、当該無人航空機を飛行させる者は、直ちに当該無人航空機の飛行を中止するとともに、負傷者がいる場合にはその救護・通報、事故等の状況に応じた警察への通報、火災が発生している場合の消防への通報など、危険を防止するための必要な措置を講じなければならない。また、当該事故が発生した日時及び場所等の必要事項を国土交通大臣に報告しなければならない。
① 無人航空機による人の死傷又は物件の損壊
人の死傷に関しては重傷以上を対象とする。物件の損壊に関しては第三者の所有物を対象とするが、その損傷の規模や損害額を問わず全ての損傷を対象とする。
② 航空機との衝突又は接触
航空機又は無人航空機のいずれか又は両方に損傷が確認できるものを対象とする。
b) 重大インシデントの報告
上記事故が発生するおそれがあると認める事態(重大インシデント)が発生した場合にあっても、国土交通省への報告が義務付けられている。重大インシデントの対象は、飛行中航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めた事態、重傷に至らない無人航空機による人の負傷、無人航空機の制御が不能となった事態及び無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る。)が含まれる。
(2.3.2) 特定飛行をする場合に遵守する必要がある運航ルール
A. 飛行計画の通報等
無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合には、あらかじめ、次に掲げる事項等を記載した飛行計画を国土交通大臣に通報しなければならない(あらかじめ飛行計画を通報することが困難な場合には事後の通報でも可)。具体的には「ドローン情報基盤システム(DIPS 2.0)の<飛行計画通報>」に入力することにより通報する。
飛行計画の通報に必要な項目 | |
① | 無人航空機の登録記号及び種類並びに型式(型式認証を受けたものに限る。) |
② | 無人航空機を飛行させる者の氏名並びに技能証明書番号(技能証明を受けた者)及び飛行の許可・承認の番号(許可・承認を受けた場合) |
③ | 飛行の目的、高度及び速度 |
④ | 飛行させる飛行禁止空域及び飛行の方法 |
⑤ | 出発地、目的地、目的地に到着するまでの所要時間 |
⑥ | 立入管理措置の有無及びその内容 |
⑦ | 損害賠償のための保険契約の有無及びその内容 |
無人航空機を飛行させる者は、通報した飛行計画に従って特定飛行をしなければならない。国土交通省は、当該飛行計画の通報を受けた場合に安全の確保のために必要と認めるときは、特定飛行の日時又は経路の変更など必要な措置を講ずるよう指示する場合があり、当該指示を受けた場合にはその指示に従わなければならない。ただし、安全を確保するためにやむを得ない場合はこの限りではない。
なお、特定飛行に該当しない無人航空機の飛行を行う場合であっても、飛行計画を通報することが望ましい。
B. 飛行日誌の携行及び記載
無人航空機を飛行させる者は、特定飛行をする場合には、飛行日誌を携帯することが義務付けられる。飛行日誌は、紙又は電子データ(システム管理を含む)の形態を問わないが、特定飛行を行う場合には、必要に応じ速やかに参照や提示できるようにする必要がある。
特定飛行を行う者は、無人航空機に関する情報(登録記号、種類、型式、製造者・製造番号等)に加え、次に掲げる事項等を遅滞なく飛行日誌に記載しなければならない。特定飛行に該当しない無人航空機の飛行を行う場合であっても、飛行日誌に記載することが望ましい。
飛行日誌に記載する必要がある項目 | |
<飛行記録> | 飛行の年月日、離着陸場所・時刻、飛行時間、飛行させた者の氏名、不具合及びその対応 等 |
<日常点検記録> | 日常点検の実施の年月日・場所、実施者の氏名、日常点検の結果 等 |
<点検整備記録> | 点検整備の実施の年月日・場所、実施者の氏名、点検・修理・改造・整備の内容・理由 等 |
(2.3.3) 機体認証を受けた無人航空機を飛行させる者が遵守する必要がある運航ルール
A. 使用の条件の遵守
無人航空機の機体認証を行う場合は、無人航空機飛行規程に定めた無人航空機の安全性を確保するための限界事項等(最大離陸重量、飛行可能高度、飛行可能速度等)を「使用の条件」として指定し、使用条件等指定書として交付することとしている。機体認証を受けた無人航空機を飛行させる者は、当該使用の条件の範囲内で特定飛行しなければならない。
B. 必要な整備の義務
機体認証を受けた無人航空機の使用者は、必要な整備をすることにより、当該無人航空機を安全基準に適合するように維持しなければならない。具体的には、無人航空機の機体認証を行う場合に設定される無人航空機整備手順書(機体メーカーの取扱説明書等)に従って整備をすることが義務付けられる。
(2.3.4) 罰則
航空法令の規定に違反した場合には、次の罰則の対象となる可能性がある(技能証明を有する者は、罰則に加えて、技能証明の取消し等の行政処分の対象にもなる可能性がある)。
違反行為 | 罰則 |
---|---|
事故が発生した場合に飛行を中止し負傷者を救護するなどの 危険を防止するための措置を講じなかったとき | 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
登録を受けていない無人航空機を飛行させたとき ※小型無人機等飛行禁止法の違反 | 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
アルコール又は薬物の影響下で無人航空機を飛行させたとき | 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
登録記号の表示又はリモート ID の搭載をせずに飛行させたとき 規制対象となる飛行の区域又は方法に違反して飛行させたとき 飛行前の確認をせずに飛行させたとき 航空機又は他の無人航空機との衝突防止をしなかったとき 他人に迷惑を及ぼす飛行を行ったとき 機体認証で指定された条件範囲を超えて特定飛行をおこなったとき | 50万円以下の罰金 |
飛行計画を通報せずに特定飛行を行ったとき 事故が発生した場合に報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき 等 | 30万円以下の罰金 |
技能証明を携帯せずに特定飛行を行ったとき 飛行日誌を備えずに特定飛行を行ったとき 飛行日誌に記載せず、又は虚偽の記載をしたとき | 10万円以下の罰金 |
(2.4) 運航管理体制(安全確保措置・リスク管理等)
(2.4.1) 安全確保措置等
カテゴリーⅡB 飛行については、技能証明を受けた操縦者が機体認証を有する無人航空機を飛行させる場合には、特段の手続きなく飛行可能である。この場合には、安全確保措置として次に掲げる事項等を記載した飛行マニュアルを作成し遵守しなければならない。
a. 無人航空機の定期的な点検及び整備に関する事項
b. 無人航空機を飛行させる者の技能の維持に関する事項
c. 当該無人航空機の飛行前の確認に関する事項
d. 無人航空機の飛行に係る安全管理体制に関する事項
e. 事故等が発生した場合における連絡体制の整備等に関する事項
カテゴリーⅡA飛行については、技能証明を受けた操縦者が機体認証を有する無人航空機を飛行させる場合であっても、あらかじめ「運航管理の方法」について国土交通大臣の審査を受け、飛行の許可・承認を受ける必要がある。
(2.4.2) カテゴリーⅢ飛行を行う場合の運航管理体制
カテゴリーⅢ飛行を行う場合には、一等無人航空機操縦士資格を受けた操縦者が第一種機体認証を有する無人航空機を飛行させることが求められることに加え、あらかじめ「運航管理の方法」について国土交通大臣の審査を受け、飛行の許可・承認を受ける必要がある。
具体的には、無人航空機を飛行させる者は、第三者上空飛行に当たり想定されるリスクの分析と評価を実施し、非常時の対処方針や緊急着陸場所の設定などの必要なリスク軽減策を講じることとし、これらのリスク評価結果に基づき作成された飛行マニュアルを含めて、運航の管理が適切に行われることを審査される。また、飛行の許可・承認の審査において、無人航空機を飛行させる者が適切な保険に加入するなど賠償能力を有することの確認を行うこととしている。
※当該リスク評価の手法についてはリスク評価に関するガイドラインが作成される予定である。
(2.5) 無人航空機操縦者技能証明制度
(2.5.1) 制度概要
無人航空機操縦者技能証明(技能証明)制度は、無人航空機を飛行させるのに必要な技能(知識及び能力)を有することを国が証明する資格制度である。国が指定した民間試験機関(指定試験機関)による学科試験、実地試験及び身体検査により知識及び能力を判定し、これらの試験等に合格した場合には、国が技能証明を行う。
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技能証明は、カテゴリーⅢ飛行に必要な技能に係る一等無人航空機操縦士とカテゴリーⅡ飛行に必要な技能に係る二等無人航空機操縦士の2つの資格に区分され、それぞれの資格において、無人航空機の種類(6種類)及び飛行の方法(3種類)について限定をすることとしている。
パワードリフト機(Powered-lift)の飛行にあたっては、回転翼航空機(マルチローター)及び飛行機の両方の種類の限定に係る資格が必要となる。
資格の区分 | 一等無人航空機操縦士資格 二等無人航空機操縦士資格 | |
無人航空機の種類 | 1. 回転翼航空機(マルチローター)(重量制限なし) 2 回転翼航空機(マルチローター)(最大離陸重量 25kg 未満) 3. 回転翼航空機(ヘリコプター)(重量制限なし) 4. 回転翼航空機(ヘリコプター)(最大離陸重量 25kg 未満) 5. 飛行機(重量制限なし) 6. 飛行機(最大離陸重量 25kg 未満) | |
飛行の方法 | A. 日中飛行・目視内飛行(基本) B. 夜間飛行 C. 目視外飛行 |
(2.5.2) 技能証明の資格要件
次に掲げる項目のいずれかに該当する場合には、技能証明の申請をすることができない。
A. 16歳に満たない者
B. 航空法の規定に基づき技能証明を拒否された日から1年以内の者又は技能証明を保留されている者(航空法等に違反する行為をした場合や無人航空機の飛行に当たり非行又は重大な過失があった場合に係るものに限る。)
C. 航空法の規定に基づき技能証明を取り消された日から2年以内の者又は技能証明の効力を停止されている者(航空法等に違反する行為をした場合や無人航空機の飛行に当たり非行又は重大な過失があった場合に係るものに限る。)
次に掲げる項目のいずれかに該当する場合には、技能証明試験に合格した者であっても技能証明を拒否又は保留することができる。
A. てんかんや認知症等の無人航空機の飛行に支障を及ぼすおそれがある病気にかかっている者
B. アルコールや大麻、覚せい剤等の中毒者
C. 航空法等に違反する行為をした者
D. 無人航空機の飛行に当たり非行又は重大な過失があった者
(2.5.3) 技能証明の交付手続き
技能証明を受けようとする者は、「指定試験機関」が実施する学科試験、実地試験及び身体検査に合格したうえで、国土交通大臣に技能証明書の交付の申請手続きを行う必要がある。この場合において、学科試験に合格しなければ、実地試験を受けることができない。
無人航空機の民間講習機関のうち国の登録を受けた「登録講習機関」の無人航空機講習(学科講習・実地講習)を修了した者にあっては、技能証明試験のうち実地試験を免除することができる。
技能証明試験に関して不正の行為が認められた場合には、当該不正行為と関係のある者について、その試験を停止し、又はその合格を無効にすることができる。この場合において、当該者に対し一定期間試験を拒否することができる。
これらの手続きについては、技能証明の新規交付に係る場合のほか、技能証明を持っていてる者が、別の飛行方法の技能証明を取得(限定変更)しようとする場合も同様である。
技能証明の有効期間は3年であり、その更新を申請する者は、「登録更新講習機関」が実施する無人航空機更新講習を有効期間の更新の申請をする日以前3月以内に修了したうえで、有効期間が満了する日以前6月以内に国土交通大臣に対し技能証明の更新を申請しなければならない。
(2.5.4) 技能証明を受けた者の義務
技能証明を受けた者は、その合格を受けた種類の無人航空機又は飛行の方法でなければ特定飛行を行ってはならない(飛行の許可・承認を受けて特定飛行を行う場合を除く)。
技能証明を行うにあたって、国土交通大臣は技能証明に係る身体状態に応じ、無人航空機を飛行させる際の必要な条件(眼鏡・コンタクトレンズや補聴器の着用等)を付すことができることとしており、当該条件が付された技能証明を受けた者は、その条件の範囲内でなければ特定飛行を行ってはならない(飛行の許可・承認を受けて特定飛行を行う場合を除く)。
技能証明を受けた者は、特定飛行を行う場合には、技能証明書を携帯しなければならない。
(2.5.5) 技能証明の取消し等
技能証明を受けた者が次に掲げる項目のいずれかに該当する場合には、技能証明の取消し又は1年
以内の技能証明の効力の停止を受けることがある。
A. てんかんや認知症等の無人航空機の飛行に支障を及ぼすおそれがある病気にかかっている又は
身体の障害であることが判明したとき
B. アルコールや大麻、覚せい剤等の中毒者であることが判明したとき
C. 航空法等に違反する行為をしたとき
D. 無人航空機の飛行に当たり非行又は重大な過失があったとき
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本稿は終わり
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